先週末、瀬戸漆喰の講習会で広島へ行った日、午前6時富士見駅発の電車に乗り、塩尻で乗り換え、しなの-のぞみーローカル線と乗り継いで、目的地の安浦駅に着いたのは13時半、約7時間半の道程だった。
何もなければ苦痛の時間だが、今回は読みたい本があったので、車中ではひたすら読書に没頭していた。
持って行った2冊の本がこちら。
眞神博著「ヘーシンクを育てた男」(文藝春秋)
どちらも柔道の本だ。
高校時代、柔道は必修科目で、毎週2回柔道の授業があった。
夏場はそうでもなかったが、特に冬場の柔道の授業はつらく、最後まであまり好きになれなかった。
そんな、たいして柔道好きでもない者がなぜこんな本を読んでいるのかというと、その前に読んだ2冊(上下巻)の本が強烈だったから。
その本というのは、
増田俊也著「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか 上・下」(新潮文庫)
戦前・戦後を通して活躍した、柔道家・木村政彦の伝記であり、日本における柔道、柔術の歴史が深く掘りさげられ紹介されている。
表題の力道山はもちろん、その時代を生きた格闘家たちも数多く登場する、まさに日本の格闘技界の歴史書と言ってもいいかもしれない、それ程インパクトのある本だった。
また、戦時中の動乱に巻き込まれ、振り回された人々の様子も描かれていて、今回僕が呉のヤマトミュージアムに立ち寄ろうと思うきっかけにもなった。
スポーツは、実力の世界と言われている。
当然、肉体をぶつけ合う格闘技こそ、実力がモノを言うはずなのだが…。
プロレスがショーであることは、僕が子供の頃にはすでにもう誰でも分かっていたが、時代の大きなうねりの中で、様々な利権が絡み、政治的な動きに翻弄されつつ、最強の実力を持ちながら、歴史から忘れされれる運命にあった木村政彦の生涯。
悲しくも哀れで、それでいて輝きを放つ彼の生き様は、男としての共感と憧れを持って見ることが出来る。
柔道・格闘技好きはもちろん、少しでも柔道をかじったことのある人には、お勧めの1冊。