読書

以前はめったに行かなかったのに、最近しょっちゅう行くようになった場所の一つに図書館がある。子供が出来てからは特にそうだ。
茅野市には立派な図書館が2つあり、隣の原村、富士見町の図書館も同じように利用できてとても便利だ。
しかもインターネットやビデオの貸し出し、子供が遊べるコーナーなども完備されていて至れり尽くせり。
行政の行う事業の中で、この図書館だけは利用者の事をよく考えた素晴らしいサービスだと思う。

今では本が好きで、図書館に1日閉じ込められても全く平気というより大歓迎だが、小学生の頃、読書はどちらかというと嫌いだった。
小学校何年かの時、毎月1冊指定された本を読んで読書感想文を書くという宿題があって、それをこなすのがいやでいやで仕方なかった。
その課題では、時には面白くない(当時の感覚で)本もあって、そんな時は目次と最初と最後の少しだけ読んで作文を書いたものだ。
一度そういうずるをすると、次も別に読まなくてもいいか、という気分になってしまって、結局感想文は全部読まないまま書き、悪循環で読書をすることも苦痛になってしまった。

中学の時もそれなりに本は読んだが、読書が本当に面白いと思ったのは高校に入ってからだ。
中学生の時、隣りの席の女の子がよく横溝正史を読んでいた。あの、黒い表紙の文庫本のシリーズだ。
その時は「そんな怖い話よく読めるな」と思っていたのだが、高校1年のある日、本屋に入るとその横溝正史の文庫本が目に入ってきた。中学生の頃の懐かしさも手伝って、早速その横溝正史を買って読んでみた。それがとても面白くすっかりはまってしまった。1年の間に横溝正史はほとんど読んでしまった。

その後、著者の好みは次々移りながら、色んなジャンルの本を読んだ。
気に入った本は買って手元に置くので当然たくさん本が溜まったが、一度引越しを機にに200冊以上の本を整理した。古本屋に持って行ったり、アメリカの友人に送ったりした。
金がない時は買わずに図書館で借りたものだが、本当は買って読みたいし、読みたいと思う本はいつでも読めるように手元に置いておきたい。

恩師である大学の教授で、出かける度に書店でたくさん本を買う人がいた。
不思議に思ってある日聞いてみた。
「先生、そんなに買って全部読めるんですか?」
「引退したら部屋中の本を眺めながら、少しずつ読んで暮らすのが俺の夢だ。」
その気持ちとてもよく分かる。

遠藤周作の子息が、ラジオで語っていた話は興味深かった。
幼稚園の頃、父遠藤周作が書店に連れて行って店員に言ったそうだ。
「この書店にウチの息子が来た時は、どの本も全て私のつけにしてくれ」
それ以来、漫画から雑誌から何でも買って読み放題。
小さいうちは喜んで漫画ばかり読んでいたそうだが、そのうちに飽きてしまって、次第に本ばかりたくさん読むようになったそうだ。
金銭的にも、凡人にはとてもまねの出来ない芸当だが、とてもうらやましい一つの理想の話ではある。
ちなみに遠藤家には、本だらけで人が住めない、本のための家があるのだとか。

最近自分の中で、読書がまたにわかブームになってきた。きっかけはラジオだ。
車の中でよく聞くNHKのAM放送では、朗読や本の紹介など時々流れてくる。最初は何気なく聞いているのだが、だんだん気になって車を止めてメモしたり帰りに本屋に寄ったり、そのパターンがとても多い。
という事で、最近読んだ本を紹介すると

『甲子園への遺言』門田隆将著(講談社)
今NHKで「フルスイング」という名前でドラマを放送しているその原作。30年間プロ野球で打撃コーチを勤めその間たくさんの有名選手を育て、その後高校教師に転職、平成16年に癌で亡くなった高畠導宏さんの話。

『つばさよつばさ』浅田次郎著(小学館)
NHKのラジオで、俳優の風間杜夫が朗読していたのを聴いて書店に走って買った。一年の三分の一を旅の空で過ごす著者のエッセイ。朗読では台湾のくだりを聞いたが、旅に出たくなる一冊。

その他にも読みたい本がいくつかあるが、残念ながら近くの本屋にも図書館にもなく、アマゾンで購入しようかと思案中。
読書の秋というが、冬の読書もまたいいものだ。

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