何年か前から奈良の法隆寺に行きたいとずっと考えていた。そして最近、これはいよいよ行かなければ、と思うようになった。きっかけはある本を読んだから。
『木に学べ』西岡常一(小学館文庫)サブタイトルに「法隆寺・薬師寺の美」。先日この本を書店で見つけた時、迷わず買ってしまった。
法隆寺最後の棟梁、西岡常一さんの本は何冊か読んだことがあるが、他の本と同じようにこの本も、作家の塩野米松さんの聞き書きのような形で、西岡棟梁の話した言葉がそのまま文章になっている。
とても良い本でオススメだ。特にこれから法隆寺や薬師寺に行こうと思っている方は、ガイドブックの代わりに持って行かれると、より深い視点から建物やその背景を見ることが出来ると思う。
法隆寺に行ったのは、中学3年の時、修学旅行で行ったのが初めてだったと思う。昔の人はすごいなーと思ったことや、玉虫厨子を見たことなど、断片的にだがまだ覚えている。
中学の修学旅行は奈良・京都だったので、有名どころのお寺などいくつも回ったのだが、法隆寺はもちろん東大寺や薬師寺、平等院や金閣寺など、結構記憶に残っている。
薬師寺ではその時ちょうど大規模な修復を行っていて、建物が丸ごと一つ大きな覆いで覆われていた。修理が終わったらまた見に来たい、などと思ったものだ。
その後(数年後)しばらく奈良県に住んでいたことがあり、何度か法隆寺や薬師寺にも行った。でもその時の目的は観光で、あまり真剣に建物を見るということはなかった。
建築の仕事をするようになってから、そう言えばまだ一度も法隆寺や薬師寺へ行っていなかった。行く機会はあったのだけど、なぜだろう。自分でもよくわからない。
と言うことで先日、本当に久しぶりに法隆寺と薬師寺に行ってきた。
嫁さんの実家が姫路なので、その帰りにちょっと寄り道をすれば、簡単に奈良や京都に行くことが出来る。そういう点では恵まれている。
今回は先に薬師寺に行き、その後法隆寺に行った。とにかく本で読んだ西岡棟梁や先人たちの仕事を見たかったのだ。
薬師寺も法隆寺も素晴らしく、搭や堂など宮大工の技術を駆使した大掛かりな建物に圧倒されてしまう。
今なら、一日中見ていても飽きる事はないだろう。
天平の建築の代表といわれる伝法堂。
つい目が行くのが、昔の職人たちの仕事。回廊の屋根、隅木の複雑な木組み。
版築の塀。
極めつけは、丸太足場で組まれた作業場。ついついこういうところに目が行ってしまう。
ところで、薬師寺、法隆寺と行ってみて思ったのは、あたりまえの事だがそれらは宗教施設だったということ。中には仏像が祭られ、もちろん坊さんもいるし参拝している人もいる。本来、その建物を建てた大工は、あくまでも脇役なのだ。
でも今は、建物が主役という感覚でつい見てしまう。それほど建物には存在感がある。
じっくり見ていると、先人たちの声が聞こえてくるようだ。