去年の今頃、前の年に植えたカツラの木が気になって仕方なかった。
一昨年植えたそのカツラの苗木もすっかり大きくなり、今は大人の背丈くらいに成長した。
その時植えたカツラの木は全部で10本。
1本も枯れることなく全て順調に育っているが、木にも個性があり、背の高いもの低いもの、葉の多いもの少ないもの、枝が根元から分かれているものや、すっと真っ直ぐ伸びているものなど、よく見ると同じ種類の木でも様々だ。
そして今年、更に気になるのは去年植えたブナとクヌギの木だ。
森林組合で植林用の苗木を買うと、25本が最低の単位となるため、去年はそれぞれ25本づつ植えた。
ところが数が多すぎて植え替えを繰り返したり、草刈の時に間違って刈ってしまったり、他の山に植えたりしたものもあり、今のところ10本づつくらいが元気に育っている。
ブナの木は以前、使い物にならないということで、木辺に無用という字があてられた。
ところがブナの木は保水力が高く、水を育てる緑のダムと呼ばれている。
更にその実は多くの動物の食料となり、無用どころか「母なる木」であることが認められている。
世界遺産の白神山地のブナの原生林は有名だ。
だからこんな小さな苗木でもとても存在感があり、頼もしい。
クヌギの木は、カブトムシが好んで集まる事でよく知られている。
子供の頃、よくクヌギ林にカブトムシを取りに行ったものだ。
そのクヌギだが、以前は炭焼きに適した木として重宝されていた。
なぜクヌギが炭焼きに適しているかというと、クヌギは根元で切ってもまた芽を出してきて10年もすると炭焼きにちょうど良い太さに成長する。
だからクヌギの林は手入れ次第で、毎年炭焼きの材料が生産できたのだ。
実際去年植えた苗木の中で、草刈の時間違って切ってしまった木の根元から芽を出しているのをいくつも確認している。
同じく以前植えた、トウヒやモミなどの針葉樹ではとても考えられない。
工房に行く度に、ここ数年で植えた木々の成長に、いつもこちらが元気をもらっている。
最初に植えた木々も3年ほどが経ち、全体でなんとなく小さな森が出来てきたような気がする。
5年後10年後、一体どんな森が出来るのかとても楽しみだ。