5月25日(土曜日)名古屋工業大学で行われた、日本左官会議主催のフォーラムに参加。
題して「無形文化遺産をめざす、伝統構法と左官技術」。
パネリストは、それぞれ日本を代表するその道の専門家の方々。
先ずは、京都工芸繊維大学名誉教授で、長年、数寄屋・茶室の研究を通して和風建築の研究や創作をしてこられた中村昌生先生。
先生が保存や記録に係わった、利休の待庵をはじめ有名な茶室、桂離宮などの伝統建築を通して、伝統構法を後世に伝える意義と必要性を教えて頂いた。
続いては、工学院大学教授で文化財をはじめ日本の建築史や歴史的建造物の保存・修復に詳しい後藤治先生。
「文化財建造物における左官の位置づけ」というテーマで、世界文化遺産登録に向けて具体的なプロセスの話が聞けた。
次は、日本左官会議の議長を務め、日本を代表する技術を持った左官職人・原田進親方。
足元にあるその土地の土や藁を使った土壁塗りの事例を、写真を使って紹介して下さった。
個人的にも原田親方とは親交があり、この日も親方の話を聞けるのが楽しみだった。
素晴らしいのは、原田さんの仕事への取り組みはもちろん、その考え方・哲学だと思っている。
この日も少しだけ、深い話をきくことが出来た。
左官会議の議長としてのおつとめ、お疲れ様でした。
休憩をはさみ、次に登壇したのは、こちらも日本を代表する技術を持った左官職人・挟土秀平さん。
テレビ等でも度々取り上げられたことがあるので、ご存知の方も多いはず。
今回は主に、海外で手がけられた仕事の様子を、写真を使って紹介して下さった。
挟土さんも原田親方同様、その仕事の素晴らしさはもちろん、それ以上に、仕事に対する考え方・哲学が全くぶれず、多くの方の尊敬を集めているのだと思う。
今まで、講習会などでは時々お見かけしたことがあったが、この日初めてお話をさせて頂くことができた。
最後に講演されたのは、日本の伝統木造技術を文化遺産にする活動の中心となっておられる大江忍氏。
大江さんからは文化遺産登録へのプロセスや現状・問題点など、具体的な話を伺うことが出来た。
その後、講演をされた先生方に加え、地元愛知で左官をしておられる川口正樹親方も加わり、大江さんの司会でパネルディスカッション。
それぞれの立場で、どうすれば伝統的な日本の建築を後世に残すだけでなく発展させていくことが出来るのか、問題点も指摘され、大変勉強になった。
フォーラム終了後懇親会が行われ、参加させて頂いた。
左官会議主催ということで、最も多いのが左官屋さん。
知っている顔も多く、久しぶりにお会いする方などもいて、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。
この時、挟土さんに初めてごあいさつさせて頂いたが、気さくに「仕事があったら行くから言ってくれ」と言われびっくりした。
「挟土さん忙しくて、とても無理でしょう」とお答えしたが、嬉しかったですね。
いつかそんな日が来ればいいですね。
ちなみに、伝統工法という場合、工法という字を書くのが一般的。
今回の文化遺産登録に向けては、あえて「伝統構法」としている。
建築基準法上も「伝統工法」というくくりは一切なく、驚くことにその定義もまだ、日本国内で定まっていないのが現状なのだ。
従って、大学の建築科での授業や建築士の試験などでも、伝統的な木造の勉強などまるでしないのが残念ながら現実であり、世界文化遺産登録に向けて、先ずはその定義作りから始めて、それを一般的に定着させてゆかなければならないとのこと。
数寄屋などの伝統木造建築をつぶさに見ていくと、大工・左官・建具・表具・屋根etc.それぞれの業種の呼吸がぴたりと合って、一つの作品として完成しており、まさにそれは、それぞれの業種が行う「工法」ではなくて、構造から意匠まで含めた全体としての「構法」なのだそうだ。
「伝統構法」という言葉、初めて目にしたが、奥の深い素晴らしい言葉だと感じた。