一般的に、施主さんが自宅の建築を自分で行うことをセルフビルドといい、一部を業者に頼み、それ以外のできることを自分たちで行うことをハーフビルドという。
2年ほど前から、そのハーフビルドでドームハウスを建てたいというHさんご家族と知り合いになった。
そのHさんご家族とは、子供が同じ幼稚園の同学年だったということもあり、それ以来家族ぐるみのお付き合いをさせて頂いている。
しかも奥さんは、安曇のパーマカルチャー塾の卒業生。
そのドームハウスが、いよいよ着工の運びとなった。
場所は原村。
同じ原村で、立派なドームハウスに住んでいる、やはりこちらも安曇野パーマカルチャー塾繋がりのつきねーとパートナー氏の協力で、アメリカからキットを直輸入。
ようやくその材料が届き、先日クレーンを頼んで建て方が行われた。
そしてその翌日、作業に携わった業者やHさんの友人が集まって、上棟式が行われた。
この日の料理を用意してくれたのは、茅野の「おいしい屋」の、のりちゃん。
前日には、大工のご主人が建て方を手伝ってくれた。ありがとう。
昨年秋に、地鎮祭をしてくださった諏訪大社で書いてくれた棟札がこちら。
この棟札を施主さんのアイデアで、ドームハウスの一番高い所に設置。
しばらくこの場所から工事の様子を見守ってくれる。
上棟式のあと、皆さんで記念写真。
施主さんの思いが伝わってきて、心に残る、良い上棟式だった。
これまで、色々な建物の建築をさせてもらったが、ドームハウスの施工は初めての体験。
縁あって、今回初めて体験させてもらったドームハウスについて、自分なりに少し考えをまとめてみたい。
まずドームハウスのメリットとして、
①使う材料が少ない割に、広い空間を確保できる。
②柱や梁などの構造材がいらないので、室内の空間を有効に利用できる。
③集成材などを上手に利用することで、使用する木材の量が少なくてすむ。
④熱や音の伝わり方に無駄がない。(パラボラアンテナの仕組みと同じ)暖房効率がいい。
⑤円構造であるため、外部からの荷重に強い。(地震に強い)
⑥人に安らぎを与える安定した形。
⑦組み合わせによって、つないで増やせる自由度。
一方のデメリットとしては、
①基本的にツーバイ工法であるため、構造上強度を合板に求めなければならない。(合板の寿命が家の寿命になってしまう)また、接着剤などによるシックハウスの可能性も否定できない。
②日本では生産体制が確立されていないため、輸入に頼らざるを得ない。
③音の反響が大きく、とんでもない所から音が聞こえてくることがある。
④熱がこもりやすく、夏場の暑さ対策が必要。
⑤つなぎ目の処理が難しく、雨漏りしやすい。(施工上の問題)
⑥日本の気候風土に適しているのか、まだわからない。
⑦構造上、天井裏(軒裏)の換気が難しい。したがって、結露やカビなどの問題が発生する可能性が否めない。
⑧人によっては、全く受け入れられない形をしている。
書き並べると分かる通り、長所が短所だったり、逆に短所が長所となっている部分もあり、評価の判断は、個人の価値観によるところが大きい建築だと言えるかもしれない。
一方、日本での実績はまだ十分ではなく、これから先、普及する可能性を秘めた分野と言えるかもしれない。
そんなドームハウス、実際施工してみての感想として、とにかく強度の高い建物であることは間違いない、地震にも強いだろうな、との印象を受けた。
今回お手伝いさせてもらうことになったこのお宅では、施主さんの素材への意識が高く、内装材に瀬戸漆喰を希望しておられるが、ドームハウスという工法自体、日本に以前からある伝統的な工法ではないし、近くの材料を使って建てるというわけにもいかない。今のところまだ日本では、自然素材とか地産地消という考え方とは相入れない印象だ。
一方、大きな空間を最小限の材料で作ることができるという点では、森林資源保護の観点から、環境への負荷が極めて少ない工法ということができる。
ドームハウスの存在は以前から知っていたし興味もあったが、今回初めて実際に施工をさせてもらって、予想以上にメリットが多い工法と感じた。
そして、どの建物もそうだが、施工によって仕上がりや強度にかなり影響を与えてしまう。
ドームハウスといえどもそれは同じで、出来れば経験を積んだ専門の業者が施工するに越したことはない。
しかし、今日本でそれは望めないし、やはり家を建てるなら近くに住む、信頼出来る人に頼むのが一番だと思う。
その点で、今回ドームハウス初心者の私に工事を依頼してくれた施主さんには感謝しているし、出来る限りいい仕事で応えたいと思っている。