夕方、仕事を終えて軽トラのオイル交換をするため、いつも整備を頼んでいる自動車屋に行った。
そこで親父さんと色々話しているうちに、「板倉の落とし板要らんか?」という話になった。
「そりゃー、もらえたら欲しいけど」
「今から見に行くか」
ということになり、急きょ板倉の解体現場を見に行くことになった。
こじんまりとした趣のある建物。
よく観察してみると、落とし板の厚みがこの辺りで一般的なもの(2寸)よりも薄く2cm程しかない。
そのため木釘が打てないのでその代わりに板の外に細い棒を渡し、縄を垂らして土を付ける工夫が施してある。
こういう下地は初めて見た。
土も厚く乗るし、ついでに縄も垂らすことが出来る、まさに一石二鳥。
剥がされて下に落ちた土を触ってみると、思いのほか柔らかく崩れやすい土だった。
持ってみると、とても軽い。
比較的固まりにくい土を厚く塗ろうと思えば、やはりこういう下地が必要だったのだろうと納得した。
建築は元来、その地域の特色が色濃く出るものだと思っている。
特に、今残っている土蔵のような建物が建てられた当時は、その傾向が強いようだ。
それはその時代、材料の移動が困難だったのが大きな原因だと思う。
それぞれの地域の職人さんたちは、身近な材料をその特性に合わせて工夫しながら使っていたということ。
解体されるの待つこの板倉を見て、改めて当時の職人さんたちの工夫と知恵、発想の自由さに脱帽。
その情熱と技術を、見習い、引き継いでいきたいものです。