高気密・高断熱

今住んでいるのは、築70~80年の借家。基礎は石基礎で、家の中はあちこち傾いている。一昔前の平屋の住宅で、古民家と言えるほど古くも立派でもない。それでもその当時の一般的な間取りなのだろう、10畳ほどの広さの部屋が田の字型に4つあり、建具をはずせば広間になる。風呂トイレ台所は別のスペース。そんな作りになっている。
最初からいきなりそういう大きな家を建てたのではなく、増築を繰り返しながら今の大きさになったという感じ。近所にも同じような作りの家が多いので、だいたい同じ年代に建てられたものだと思う。

そんな古家の一番の悩みは、冬の寒さへの備えがまるでないことだ。床や壁、天井にも断熱材は一切入っていない。その上開口が大きく取ってあるためとても風通しが良い。その頃の家は、とにかく夏快適に過ごせるようにだけ作られている。確かに夏は涼しくて良いが、逆に冬は考えられないほど寒い。住んでいるこの辺りは標高が900メートルほどあり、冬は寒いときで-15度くらいになる場所だ。家の中のコップの水が凍るくらい寒い。
そんな借家に、もうかれこれ10年近く住んでいる。

子供が生まれる前、つまり夫婦二人で生活していた時は、石油ファンヒーター一つでも、何とか生活できた。ところが子供が生まれるとそうはいかない。生まれたばかりの赤ん坊に風邪をひかすわけにはいかない。今はファンヒーターを3つ点けて何とかしのいでいるが、一冬で使う灯油の量もハンパではない。ストーブのタンクに灯油を入れるたびに、良心の呵責に苛まれる。

日本の古家において、なぜそういうことが起きるのかというと、気密と断熱を全く考慮していないからだ。ストーブの熱は、焚いたそばから室外へ逃げていき、ストーブを消すと部屋の中はたちまち寒くなってしまう。
「お前は大工なんだから、自分で直せよ」と言われるかもしれない。でもそこは、借家の悲しさなのだ。もちろん冬になると、窓際に断熱材を置いたり、部屋にカーテンをつけたり色々工夫はしている。でも焼け石に水。根本的な解決にはならない。ここに住む限り、現状で何とか生活するしかないのだ。

そういう家に住んで、特に冬場、日々実感するのが住宅における高気密・高断熱の重要性だ。
以前、気密住宅というと悪いイメージを抱かれることが多かった。建材の接着剤などに含まれる化学物質によるシックハウスが、大きな社会問題になったからだ。でもそれはまったく別の問題で、高気密・高断熱とシックハウスの問題は、本来、分けて考えなければならない。

新築の住宅で、ただ単に高気密・高断熱を実現するのはそれほど難しくない。断熱材は性能の良いものを厚く、開口部も特に気密性・断熱性の高い製品を使って、あとは施工さえきちんとやれば、まあ多少値段は張るが高気密・高断熱の住宅は出来る。
問題は、それをいかに出来るだけ自然素材だけで実現するかだ。そのヒントは、実は身近なところにあると思っている。

僕の住んでいる諏訪地域の土蔵は「板倉」と言って、落とし板に土を塗った二重構造になっているものが多い。これはこの地域独特のもので、他の地方にもいくつかあるようだが、比較的珍しい工法だ。
諏訪地域でなぜ板倉が広まったのかと言うと、当然その気候風土に関係がある。ここら辺は特に冬の寒さが厳しい。この地域の特産品に寒天というものがあるが、これは海草のゆで汁を外気で凍らせて作る、寒いから出来る特産品だ。
そんな冬の寒さが厳しい地域で作られている板倉には、やはりそれだけの性能が備わっているはずだと思っている。
そんな板倉の構造を参考にした「落し板の家」を現在計画中。工事の様子はこのページで紹介する予定だ。

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