子供の頃は、よく近くの田んぼで遊んだものだ。
稲刈りの終わった田んぼは、キャッチボールをするグランドだった。山になった藁の上では、友達とバック転の練習をしたりもした。
冬は、田んぼに水を張って凍らせた氷の上が、僕達のスケートリンクだった。
そんな具合に子供の頃は、日常生活の身近な所に、常に田んぼがあった。
中でも田んぼの一番の魅力は、水が張ってある時期だ。中をのぞくと様々な生き物達がいて、子供達をとりこにした。
カエルやミズスマシを始め、ヤゴやゲンゴロウなど様々な水生昆虫やオケラなどの昆虫、タニシなどの貝類、ドジョウやフナなどの魚類やカニ、ホタルの幼虫もよく見かけたものだ。
それがいつの頃からか、田んぼから生き物が消えてしまった。
最近、うちの周りでは、山などを切り開いて作られた田んぼ(いわゆる整備事業)が多く、一見整然としていて美しいが、田んぼや水路を覗いても、生き物の気配がなくつまらない。いるのはせいぜいカエルくらいだ。
田んぼから生き物がいなくなってしまった原因は、農薬など様々あるだろうが、用水路が全てコンクリート張りでは、生き物の住む余地がなくなるのは当然だ。そろそろあの3面張りやU字溝などの愚かな用水路は、やめたらどうだろうか。脱ダムの次は、脱コンクリート水路。田中さんは知事になれなかったが、次の知事にそのくらいのことをやってもらいたいが。
先日テレビを見ていたら、ゲンゴロウの類が絶滅寸前とのこと。そう言えば、最近見かけなかったな。
しかし、何と言うことだろう。ゲンゴロウといえば、昔は小さな水溜りにもいた、ごくありふれた身近な昆虫だった。
小学生の頃、夏前になると生徒達みんなでプールの掃除をした。その頃は冬の間でもプールに水が張ってあって、掃除前のプールは水生昆虫の宝庫だった。
ゲンゴロウはもちろん、タガメやヤゴ、ミズカマキリなどもたくさんいた。そんな所でも、様々な昆虫と出会うことが出来たのだ。それが今や、ことごとく絶滅危惧種となってしまった。
地球上から一つの種が消えるということは、それだけ急激に環境が変化したということだ。それは全て、人間の仕業だということを忘れてはいけない。
ストローベイルハウスやタタミハウスなどの藁の家では、中の藁が傷まないかと心配する人が結構いる。
もちろん傷まない工夫やメンテナンスは必要だが、それでも傷んでしまうリスクは、石油製品などの新建材より高いかもしれない。
でもきちんと施工してメンテナンスすれば、2、3十年は持つものなのだ。条件によっては、50年以上だって充分持つはずだ。
しかも骨組みの木造は、解体して再利用が出来るほど寿命が長い。
とは言え、予期せぬ事態で中の藁が傷む場合もあるだろう。その時は、直せばいいのだ。
僕には、壁の中の藁が傷むことよりも、ゲンゴロウがこの世の中からいなくなることの方が気掛かりだ。自分の家の壁は、はがして直せば元に戻るが、一度いなくなったものは二度と取り戻せない。
ゲンゴロウやタガメなどの次に、人間が絶滅危惧種にならなければいいが。