左官講習会レポート(大津磨き)

24日に参加した左官講習会で取ったメモ、忘れないうちにここにまとめておこう。他のページで残そうかとも思ったが、ふさわしい場所がないのでとりあえずここにまとめておいて、いずれどこかにそういうページを作るかもしれない。興味のない方は読み飛ばしてください。

石灰の種類
粉末消石灰(日本では一般的)
クリーム型消石灰(石灰クリームといわれているものとほぼ同じ)
焼いた石灰石に水を混ぜて発熱させると消石灰が出来る。その時水を少ない量入れると粉末になり、水を大量に入れるとクリーム状になる。
日本では粉末を使い、ヨーロッパではクリームを使う場合が多い。
粉末とクリームでは同じ石灰でも性質が違う。
今回の講習会では、山本氏が粉末消石灰を使用、一方小沼氏は、自作のクリーム型石灰を使った。

ひだしスサ
市販のひだしスサはそのまま使わず手を加えてから使う。
杉丸太の年輪の面の上(硬さが丁度良い)で、なた(手斧)を使って刻む。それを箕を使ってあらかじめ篩っておく(茎が残ると仕上げに影響する)。
篩いには箕を使う。
箕‥‥柾目編み
 ‥‥斜め編み
篩い方‥‥ひだし‥‥柾目編みを使う‥‥茎を下に集め取り除く
   ‥‥さびき‥‥斜め編みを使う‥‥細かい(軽い)スサを飛ばして集める
箕にも色々あって、細かい網目の良いものを使う。

大津磨きは粘土を多めに入れるため、チリの汚れは掃除できれいにできる。養生せずに塗る度にチリ箒で掃除すればよい。

大津磨き
下塗り‥‥灰土(ハイツチ)
仕上げ‥‥引き土(ヒキツチ)

灰土の配合‥‥粘土、石灰、ミジンスサ
粘土が多いほど水持ちが良い。逆に石灰が多いと乾きやすい。

漆喰には白いスサ(白雪等)を使うが大津磨きにはそれより太いスサを使う。仕上がった時スサが浮き出たような形を出す。粘土を多く石灰を少なくして、大津磨きの表情を出す。

灰土の押さえ(こなし)。地金かあまい半焼きの鏝を使う。締め付けながら、肌を荒いままにする。本焼きを使うと表面を塞いでしまい引き土がやりずらくなる。

手桶
以前は左官用のものがあった。よくお墓で使うものは細く深すぎ。左官用には口が広く大きすぎず、深さも短めのものが良い。
今は金属のバケツがあるが、それがない頃は全て木の手桶だった。それでチリ箒を叩くと、銅線を巻いた物だと桶が傷んでしまう。そこで京都の職人は短めのチリ箒を使い、指を添えて水を切る動作が身についた。京都の職人には今もそうして水を切る人が多い。

新しい鏝は角が立っているので、仕上げには使えない。あらかじめ中塗りで使って角を丸くするか、サンドペーパーで角をとってから使う。

京都では大津磨きというが、大阪や兵庫では二分(ニブ)と言う。これは石灰の割合。
石灰:粘土が2:8と言うこと。粘土の割合が多い事がわかる。

引き土には4~5寸の短い鏝を使う人が多い(特に京都の職人さん)。仕上げる場所の広さにもよる。普段から大きな壁を塗っている人は、比較的大き目の鏝を使うようだ。

水引のタイミングは、口で説明できない。経験でつかむしかない。
早すぎると下地の色が仕上げに出てしまう。遅すぎると塗りづらくなる。天候や現場の状況、粘土の特徴やスサの量など様々な要因が重なってくるので、たくさん経験して覚えるしかない。

引き土‥‥和紙を入れ3年ほど寝かせたものが良い。1ヶ月でも寝かせると違う。粘土に和紙を入れて寝かせる。その時石灰は入れない。石灰を入れると腐らない。繊維が溶けないので石灰は塗る前に入れる。(今回山本氏の引き土は、あらかじめ石灰を5%程度入れて寝かせていたようだ。人によってやり方が違う。)
石灰の代わりにドロマイトプラスターを入れると、材料が残った場合、短い期間(2週間ほど)で使えなくなってしまう。

和紙は繊維が長すぎるとダメ。5~6ミリ程度。ちぎるとわかる。ガンピ、ミツマタ、コウゾなどあるが、ガンピが良い。
方法‥‥水につけておいた和紙を取り出し木で叩く。
  ‥‥粘土に混ぜていたこすりをする。
ジューサーやミキサーを使っても可。
入れる量については実験をする。目安として、土1kgに対して和紙10g。富沢建材で扱っている。
和紙の糊は腐りやすいので、溶いておくとすぐ傷んでしまう。引き土を準備する直前、その都度溶くということが大事。
科学糊を使った和紙もある。

ベンガラ‥‥メーカーによって鏝すべりが違う。
ホームセンターで売っているものは、さくくなる。仕上がった時われやすい。
普段は「紅梅」「白欄」など使う。
ベンガラは白土に入れると色が沈む。黄土に入れた方が鮮やかな色になる。好みと仕上げる壁の雰囲気で材料を選ぶ。

京都では「雑巾戻し」という技法が使われる。(今回の山本氏の実演)日本手ぬぐいを使って、水をしみこませて壁に戻す。それを二度繰り返す。戻したほうが割れずらい。
スポンジ拭き、乾拭き‥‥色をそろえる。輝きは少し落ちる。
大きな壁は戻さない‥‥戻せない。
雑巾戻しの後、漆喰均し鏝(地金の2枚張り)を使うと効率が良い。

地金の鏝で磨くとある程度光るが、やりすぎると磨きの鏝で光らない場合がある。こての分子構造と壁の粒子の問題。出来るだけ早めに磨きの鏝に替える、そのタイミングが重要。

雑巾戻しの後、ビロードを使って表面を拭く。
ビロードは13世紀ヨーロッパから伝わった布。その中に綿のわたを入れて、雑巾大の布団を作る(座布団と呼称)。磨きの道具として使われる。
左官の技術は歴史的なつながりの中で発達してきた。日本に来たヨーロッパ人宣教師などが着ていた服のビロードを磨きに使ったと考えられる。出来るだけ簡単に、きれいに仕上がる工夫を重ねて来た。
現代は多くの左官が、スーパーミンク(化繊)を使っている。鏝跡を消し、艶も出る。スーパーミンクのあとビロードをかける。2段構えで仕上げる。

磨き大津壁は手入れしないと肌が悪くなる。粘土によって10年~20年。
手入れ‥‥番茶を1時間ほど炊いたものを表面に塗り、乾拭きをする。
風化には、酸化という要素が強い。番茶を塗ることで抗酸化作用が働くと考えられる。

現代大津磨きに続く

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