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傷んだ土蔵を見て心を痛めるのも事実ですが、じっくり観察するのは意外と楽しいのです。
それは、昔の職人の仕事が見られるからです。
土蔵は地域によって特徴があります。それは、その地域の中でいくつかの職人のグループが競い合うようにして建てたからです。
それが世代を超えて受け継がれ、発展していった結果です。
はがれた土壁の隙間から、そんな職人達の声が聞こえてきます。
土蔵は基本的には似たようなつくりですが、じっくり観察すると、それぞれの仕事に特徴があり、見ていて飽きません。
特に下地の仕事は、壁をはがさない限り見ることは出来ませんが、幸か不幸か、今は沢山見ることが出来ます。
今では、そうした仕事を教わることは難しくなっています。
昔と同じ方法で、土蔵を作っている人が、少なくなってしまったからです。
壊れかけの土蔵は、私にとって大切な教科書です。