昨年作ったタタミハウスのポンプ小屋。たまに様子を見に行くのだが、森の中に建っている様子は、周囲の風景に溶け込んでいて違和感がない。
なぜ周りの自然と溶け込んで見えるのだろうか?それは壁の材料が、主に土という自然素材だからだと思っている。
別荘などで新建材の家をたまに見ることがあるが、周りの自然が濃いほど違和感を感じてしまう。
自然の中に建つ家は、やはり自然の素材が良いと思う。壁には出来れば現場の土を少しでも使いたい。そうする事で、その土地の風景になじむ家になると思うからだ。
この5月から着工予定の土壁の家の建築届けを、先日ある役場に出したところ壁の色についてクレームがついた。色が薄いので濃くしろというのだ。
建物が建つ予定の場所は、八ヶ岳の景観条例なるものがあって、原色の壁は原則禁止ということは聞いていた。赤や青や紫といった派手な色はだめで、そんなことは常識として当然と思っていたが、その担当者は土壁の自然な色合いにもクレームを付けたいらしい。
図面の打合せの時、設計と相談して土壁のサンプルと近い色を見本の中から選んで書き込んだのだが、その色が薄すぎるのだそうだ。
そこで浮かんだのが「お役所仕事」という言葉だ。
先日NHKのラジオ番組で、ある障害者の郵送での投票が認められない理由について、アナウンサーが「それはお役所仕事ですねー」と言っていたが、NHKのアナウンサーにそう言わせるほど、それは日本中で蔓延している。
原因は簡単な事だ。現場を見ない、自分で責任を取らない、事無かれ主義。
その建物がその場所にふさわしい色かどうか、現場を見なくてどうしてわかるのだろうと思ってしまう。
建築をやっていると、役所や行政の対応でそう感じることが多い。
一昨年世間を騒がせた建築偽装問題も、根本的な原因はそこにあると思っている。でもあの問題で、行政は誰一人責任を取っていない。果たしてそれであの問題は解決したのだろうか。
あれ以来、建築士の試験や申請手続きなど、建築士への締め付けばかりが厳しくなっているが、本当はそういったシステムを変えなければいけないのではないだろうか。
そういう批判をすると、姑息ないじめに遭いそうなのでこのくらいにしておこう。関係者がこのHPを見ていないことを祈る。まあそういう人たちはこんなしがないHPなんか見ないだろうけど。