仕事中、自動車で移動中する時は相変わらずラジオを聴いていることが多い。
FMがついていればFMを聞くところだが、今乗っている軽トラにはAMラジオしかないのでやむをえずAMを聞いている。ここら辺(八ヶ岳周辺)は山が多く、NHKの放送しか鮮明に入らない場合が多いので、それでなんとなくNHKのAM放送を聴く機会が増えたのだが、これが意外と勉強になる。
以前もその流れで本を紹介したが、今回はカンボジアで伝統的な織物の復元や保存に取り組んでおられる方の話が耳に止まった。
「クメール伝統織物研究所」という名前で現地で活動されていて、HPがあるので興味のある方は見て下さい。
代表の森本さんという方が、カンボジアで途絶えかけていた伝統織物の技術を、復活させようと努力された様子を語っておられたが、大変興味深い話だった。
カンボジアにはかつて優れた織物の文化があったが、長期にわたる圧政や内戦などすっかり廃れてしまっていた。そこで以前織られていた織物を復活させようと先ずされたのは、織物の技術を持った人を探すことだったそうだ。内戦後の混乱の中、山奥の村々や時には難民キャンプを訪ねて、織物が出来る人を捜し歩いたそうだ。
そして全く廃れていたカンボジア織り独特の糸を出す蚕をタイから持ち込み養蚕を復活させ、同時に染めを行うために以前からその土地で使われていた植物を植える。そうした織物を復活させるための活動は、詰まるところ自然環境を含めた織物を作るための環境を作る作業だったそうだ。
この研究所の織物は全て手作業で作られ、使う材料も自然の物。合成染料などは使わない。染めに使う染料は、主に樹木から採るようだが、ただ染めに使う木を植えただけではだめで、良い染料を採るには良い土を作る必要があるとのこと。
染料の中にはカイガラムシという昆虫の巣を使うものもあり、その虫も環境の変化で減ってきているそうだ。つまり大切なのは全体の環境、すなわち森なのだ。
同じ樹木から採った染料でも、土によって発色や保ちが違うという話にはびっくりした。土って大事なのだ。
そういえば日本でも土が痩せて、江戸時代の野菜と比べ、今の野菜はミネラルの量が極端に少ないという話を聞いた事がある。
地球上の生物で土の影響を受けないものはない。
山にある森と海はつながっているとして、牡蠣の養殖業者が植林に取り組んでいるという話もあったが、そういう意識が大切だと思う。
今ほど交通が発達していなかった頃は、織物もそうだと思うが建築も含め生活全般で、身近にある材料を生かして、工夫して使っていたのだ。土壁や下地、茅葺の屋根などはその典型で、それぞれの地方で特有の材料を使っていたようだ。また土壁の色も地域によって異なり、隣の村でも全く違った色ということがある。いずれも共通しているのは、身近にある材料を使っていたという点だ。
身近にある材料をもっと見直そう。