メキシコ回想録3 メキシコ、バスの旅

メキシコの国土は日本の約5倍の広さがあり、旅行者は国内の移動に、飛行機、電車、バスなどを利用する。(カリフォルニア半島に渡るのにフェリーも利用した)
飛行機は、急ぎの用事がない限り乗らなかったが、新規参入の航空会社が、2人で1人分の値段というキャンペーンを時々していて、友達と利用したこともあった。
電車は現地の人から「全く時間を守らないから乗るなと」言われていた。メキシコの電車に関するエピソードでこんなのがある。
全く時間を守らないメキシコの電車。1時間、2時間遅れは当り前。ある日時間通りにホームに電車が入ってきたので皆びっくりしていると、1日前に到着するはずの電車だった。
このエピソード、決しておおげさでない気がする。本当のところはどんなものか、一度乗ってみたかったがついに電車には乗らなかった。
余談だが、シティーでは地下鉄が発達していて、いつも利用していたが時刻表はなく、15分程の間隔で次々と運行されていてとても便利だった。

そんな訳で、国内の移動でよく利用したのが長距離バスだ。 長距離バスは、ちょうど空港のようにターミナルが一つにまとまっていて、そこに行けば北でも南でも、自分が行きたい所に行くバスに乗れるようになっていて、このシステムはなかなか便利だった。
バスはチケットの値段によっていくつかの等級があり、最上級の寝台バスは、飛行機のファーストクラスのような乗り心地で、座席も大きく、ほぼ水平にリクライニングする豪華さだったが、これは大都市を結ぶいくつかの路線にしかなく、いつも利用するのは決まっておんぼろバスばかりだった。
何しろシティーから20時間以上かかる距離だ。しかも田舎へ向かって行くのでどんどん道は悪くなる。 夜出発して運転手2人で昼夜走り続け、朝と昼の食事以外ほとんど止まらない。とにかく夕方までには着くぞという、運転手の気合で走っているようなバスだった。
困ったのはトイレがない車輌に当たった時で、運転手は急に車を止めて道端でやっていたが、乗客は明らかにみんな我慢していた。その時はさすがに、着くなりトイレに駆け込んだ。

そんなバス旅行だから、当然ハプニングも発生する。
メキシコには雨季と乾季があるが、特に雨季には気をつけたほうが良い。
その日は途中良い天気だったが、局地的に大雨が降ったのだろう、道路を寸断してにごった水が巨大な川になって目の前を流れていた。目的地まで、もうあと4時間ほどのところだ。
川の真ん中辺りで、トラックが2台、バスが1台立ち往生している。中には人がいて、そのまま水が引くのを待っている様子だった。
バスは氾濫した川の手前で止まり、運転手も乗客もバスを降りてその様子を眺めていた。 すると突然運転手が「みんな乗れ!」と叫んでバスに乗り込むではないか。 乗客も慌ててバスに乗り込んだ。そのとたんバスは助走をつけて水の中へ。まるで船が水の上を進むように、水しぶきを上げながら立ち往生しているトラックの間をすり抜け進んでいった。窓から下を見ると、茶色い水が手を出せば届きそうな所まで来ている。いつ止まるかとヒヤヒヤしながら、それでもやっとの思いで向こう岸に到着したときは心底ほっとした。

またある時は突然大渋滞が発生、炎天下の下4時間も全く動かない。この時はたまたま水とビスケットを持っていて、大いに助かったが、渋滞の原因は大型トラック2台の事故だった。
事故車の横を通り過ぎる時、目にしたのは信じられない光景だった。トラック同士の正面衝突で、2台とも運転席が荷台にめり込んで、コンテナが2つくっついた状態になっていた。
シティーから南部に行く道はまだ充分に整備されておらず、対面通行の舗装道路が延々と続いている。そこをトラックやバスが猛スピードで行き来しているのだ。路面も舗装されてはいるものの、ところどころ穴が開いたり砂利がたまっていたり、とても危険な状態だった。
何もないジャングルの中ならまだいいが、町や村があるところではそこが生活道路なのだ。猛スピードで通り過ぎるトラックの間をぬって、村の女性や子供達が小走りに道路を渡る姿はとても危なっかしかった。

お陰さまで、移動中乗っていたバスが事故に遭ったことはなかったが、故障で止ってしまったことは2、3度あった。いずれも真夜中で、寝ぼけているうちに後ろから来るバスに乗せられ、次の町で下ろされるのだ。
次の町では、恐らく同じような境遇の人たちがターミナルに何人もいて、目的地に行くバスが来るのをひたすら待っている。
そんなスリリングなバスの旅だった。

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