先日自宅の本棚をあさっていたら、懐かしい本を発見した。
『二百年もつ家がほしい』私の家づくり奮闘記 伊藤勝著(彰国社)
15年以上前に読んだ本だが、僕が自然素材の建築を目指す上で大きな影響を受けた本。
著者がこだわったのは、とにかく家を長持ちさせること。そのためにどんな工法で、どんな材を使うか。数々の本を読み、何人もの設計士や大工に直接話を聞き、いくつもの建物を見て研究し、自宅を完成させるまでを綴った、まさに「家づくり奮闘記」なのだ。
すごいのは、法隆寺の西岡棟梁にまで話を聞いている事。自宅を建てるために、普通そこまでなかなか出来ない。
こんなお施主さんが来たら、建てる方としては大変かもしれない。でもその分やりがいがいを感じることも確かだろう。
二百年家をもたすため著者が選んだ方法は、木で家を作る。軒を深く。余分な金物を使わない。高床式にして床下の風通しを良くする。壁を落し板にしてメンテナンス(修理)しやすくする。シンプルな構造とデザイン。新建材や工業製品を使わない。必要のないものを持ち込まない。
家づくりの上で参考になることばかりだ。
この本の中にも出てくるが、昔ながらの継手や仕口で仕事をしている人の作った家が、合板の天井だったりクロスの壁だったりすると、本当はどこにこだわるべきなのか考えてしまう。
普段業者として色々な仕事をしていると、金物やボードや合板や断熱材など、使うことが当たり前になってしまう。そしてそれに慣れてしまうと、そうした工業製品を使うのが良いことのように錯覚してしまう。
でもそれはごく自然な流れで、今の建築に関する決まりや法律が、全てその方向に向いているのが大きな原因となっていることも事実なのだ。
でもだからと言って、それが正しい事とは限らない。
私たち日本人とって本当に良い家とは、昔からそうであったように、身の回りにある自然の素材だけを使って建てた家であってほしい。
久しぶりにこの本を読んで、忘れかけていた大切な事を思い出すことが出来た。
初心忘れるべからず。