以前、建前のお手伝いに行った時、軒先にたくさんのカメムシが止まっていた。
そのままでは仕事に差し支えるので、その都度落としていたのだが、その時初めて、カメムシが滑空するのを見た。
上空から落とされたカメムシは、いきなり羽を広げて飛ぶのではなく、しばらくグライダーのように滑空してバランスを取り、体勢を整えた後、羽を広げて飛んでいく。
カメムシの背中は、角張った平たい形をしている。
そのための形だったのだと、昆虫の身体に備わった機能と知恵に感じ入った。
秋にカメムシの多い年は、雪が多いと言われている。
今年は特にカメムシが多かった。
工場で少し材料を移動させると、たちまちカメムシが出てくる。
姿は見えなくても、あの独特の匂いが漂ってくる。
この冬の雪は多いのだろうか?
カメムシが好きだ、という人はほとんどいないのではないだろうか。
その原因は、あの独特なにおいだ。
ある人のブログに、カメムシの匂いとパクチーの匂いが似ている、という記述があった。
僕が初めてパクチーを食べたのは、台湾に行った時だ。
台湾ではパクチーのことを香菜(シャンツァイ)と呼んでいた。
ちなみによく似た単語で香草(シャンツァオ)というのがあり、こちらはバナナのこと。
そのシャンツァイ、最初は閉口したが、数か月後には食べられるようになり、1年後台湾料理にはなくてはならないものとなった。
その後4年暮らしたメキシコでも、パクチーはしょっちゅう食卓に登場した。
ちなみにメキシコでの呼び名は、シナントロ。
タコスや肉料理に使うサルサには必ず入っていて、これもメキシコ料理には欠かせないもの。
カメムシの匂いとパクチーの匂い、たしかに少し似ているかもしれない。
あのブログを読んでから、カメムシのあの匂いをかぐと、懐かしい食の記憶が思い出されるようになった。
そういえば、久しくパクチーを使った料理食をべていない。
なんだか無性に食べたくなってきた。