刃研ぎ

明日から新しい現場が始まる。
ということで、いつもの儀式、鑿と鉋の刃研ぎをした。
新しい現場が始まる前になると、なぜか道具を研いだり手入れしたくなる。
本当は、毎日やらなければいけないのだが…。

刃物を研いでいると、学生時代を思い出す。
学生時代は寮生活で、しかもチョー体育会系だった。
1、2年の頃、先輩に呼ばれて、毎晩のように按摩に通っていた。
もちろん、先輩の按摩をするため。
夜中1時を過ぎ、先輩が寝るまでなんてこともザラ。
今なら問題になるかもしれないけれど、そんな時代だった。
ちなみに按摩はする一方。
後輩ができてからも、やってもらったことは一度もない。
でもまあそのおかげで、按摩はずいぶん上手くなったけど。

思い出すのはその時のこと。
按摩の力の入れ具合と、刃物を研ぐそれがよく似ているのだ。
刃物を研いでいる間は、手を動かしつつ、様々なことが浮かんでくる。
ちょうど瞑想しているような感覚。

あの頃、按摩ではなく、同じくらい熱心に鑿や鉋を研いでいたら、今はどうなっていただろう。
もっと腕のいい職人になっていただろうか、それとも、まったく別の仕事についていたかもしれない…。
そんなことをあれこれ思い浮かべながら、次々研いでいると、あっという間に時間が経ってしまう。

そうこうするうちに、下の子(3歳)がぐずり出して、終了。
もうちょっとやりたかったのだが…。

この日は勢いで、このあとセルフ散髪。
やはり学生の頃、散髪代節約のため、同級生でお互いに髪の毛を切り合ったりしていた。
中には器用なのがいて、特に上手いやつには、予約で順番待ちが出来ていた。
僕もそれほどではなかったが、何人かのお得意さんがいた。
だから自分の髪の毛を切るのも、それほど苦ではない。
むしろ自分の頭は、失敗しても誰にも文句を言われない分、気が楽だ。
だから我が家では、子供達の散髪は僕の担当、僕自身、床屋にはしばらく行っていない。

学生時代身につけたことで、今も役立っていることは多い。
というか、生かさなければモッタイナイ。
按摩と刃研ぎに共通点があるように、一つのことを究めると、その技術や考え方を他に活かせることが多いと思う。
明日から新しい現場、気分一新。

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