学生時代、一年間担任だった先生が、篳篥(ひちりき)の名手だった。
篳篥(ひちりき)というのは、雅楽で使う楽器の一つ。
最近では、楽師・東儀秀樹さんが、現代音楽に取り入れたことで広く知られるようになった。
ちなみに雅楽は、日本古来の伝統音楽と言われている。
僕が行っていた学校は奈良県にあり、そのせいか、身近にそういう人がいたのだが、ある時その先生から「篳篥(ひちりき)のケースを作ってくれ」と頼まれた。
ちょうど材料となる、解体された黒檀の床柱があって、それで篳篥(ひちりき)のケースを作ることを思いついたとか。
早速作ってみたところ、「なかなか良いものが出来た」と、喜んでくれた。
今考えると、その頃から結構器用だったんだな。
そのケースは、扇を開くような形で、蓋が薄く、ちょうど笏板のような形をしていた。
そこで、笏板も作ってみろということになり、いくつか作ってすべて人にあげてしまった。
さすがは奈良県、結構そういう需要があったんだな。
それ以来、黒檀の良い材料を見ると、ついそういうものを作って見たくなる。
半年ほど前、博山先生と青梅の材木屋に行った際、黒檀ではないがよく似たウエンジという材の端切れを見つけて買って来た。それで、学生時代作ったのと同じような笏板をいくつか作ってみた。
先日、何かのついでにそれを先生に見て頂くと、「ちょうど今、笏板を作ってくれと言われているんだよ」とのこと。
すぐ近くに「身曾岐神社」という神社があり、先生がそこの宮司さんと知り合いで、以前から笏板を作ってほしいと頼まれていたらしい。
「型があれば、すぐ作りますよ」と言ったら、その二日後に実物を借りてきてくださり、いよいよ本格的に笏板を作ることになった。
まず、材料をどうすれば良いか先生に相談すると、「笏板というのは本来、イチイの木を使うものだ」と教えて頂き、木工家の友人にイチイの板を分けてもらって早速作ってみた。(写真の左三枚)
材料さえあれば、作るのはそれほど時間はかからない。
他の仕事もやりながら二日ほどで仕上げて持っていくと、「これから身曾岐神社に行こう」ということになり、思いがけず直接納品となった。
そのお返しに頂いたのがこちら。達筆ですね~。
身曾岐神社で、先生と先方の代表、副代表の方とお話しさせて頂き、とても良い勉強になった。
それから、その場で新しい仕事に結びつけてしまう博山先生のバイタリティー、敬服します。
ちなみに、今回作ったイチイの笏板。大変喜んで下さったようで一安心。
博山先生とのご縁で、どんどん新しい縁が広がって行く。
出会いに感謝。