昨年、離れの風呂トイレ棟のお手伝いをさせてもらった富士見の茅葺屋根の家。
今年ももう秋になり、先日ご主人から、土壁のやり方を教えてほしいと連絡を頂いた。
茅葺屋根の葺き替えも終わり、見事な屋根に圧倒される。
そして風呂棟では、仮に貼ってあった杉の板を剥し、土壁用の木舞をかく作業。
すでに取り付けてある木舞は、古い建物を解体した時に外しておいたもの。
この木舞はまさに字の通り、細い木を割った材料で作ってあり、補強には竹ではなく葦を束ねたものを使っている。
冬の冷え込みが激しい諏訪地域には、壁の下地に適した竹がなく、昔から身近にある木の枝や葦などが使われていた。
この下地にも、木目で割った細い堅木が使われている。
まだ製材機がない頃、おそらく一般的なやり方だったはずだ。
昔の人の仕事は、本当に素晴らしく感心させられることばかり。
お風呂の壁には瀬戸漆喰を使った。
翌日、忘れ物を取りに現場に行くと、すでに土壁が塗られていた。
今回は、とりあえずトイレ周りだけだが、この建物全体土壁で塗られるととてもいい雰囲気になると実感。
土壁は、昔からやられている日本の建築技術の根本。
手間と時間は掛かるが、日本人が捨ててはいけない、本当の伝統技術だと思う。
細かい施工方法は地域や風土によって異なるが、身近にあるものを工夫して使うという点で、発想は同じ。
今は流通が発達し、季節とか地域や気候風土といったものがおろそかにされがちだが、本当に大事なのはそういうことではないのかと、土壁に触ると改めて強く感じるのだ。
この茅葺の古民家を直して住もうという時点で、その決断をされたオーナーさんに敬意を持たずにはいられない。
その仕事の、ほんの少し一部でもお手伝いさせて頂けたことは本当にありがたいことと感謝している。